早稲田大学エジプト学研究所
 
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早稲田大学古代エジプト調査隊の歩み

ジェネラル・サーベイの風景 1966年に学生が中心となってゼネラル・サーベイがエジプト現地で行なわれたのが第一歩で、その後45年にわたって現地調査が行なわれている。本格調査はルクソール西岸マルカタ南地区で1971年に開始されたが、1966年から1970年の間もナイル川流域を当時隊長だった故川村喜一教授と私が毎年発掘地点の選定のため何回も往復して発掘に適する場所を探しつづけた。
 その中で最初に選んだのが、中部エジプトのアル=ミニアの東岸のディール・アル=ベルシャという所だったが、ここは突然1970年に外国人が入ってはならない場所に指定されてしまったので、他の場所を再選定しなければならなくなってしまった。しかしそれは私たちにとってラッキーなことだった。というのも次に決めたマルカタ南という地区はルクソールという観光地の近くにあるため行き易いし、人々が多少でも外国人慣れしているということがある。発掘をスムーズに行なうための重要な条件が整っていたというわけだ。
 そして45年、私たちは数多くの成果を上げてきた。当初はビギナーズ・ラックと外国隊から言われていたし、自分たちもそういう意識を持っていたが、10年をすぎるとそう言うだけではいけないという認識を持った。そこで導入したのが、世に言うハイテク調査だ。これは地球の物性を物理的機械を使って解くもので、方法は数十種類あるとされている。その中から私たちは5種類ほどを採用し、実際にエジプトの地で試行した。中でも電磁波地中探査法は有効であり、その成果は私たちの名を上げるのに役に立った。現在私たちが発掘調査しているアブ・シール南丘陵遺跡はこの電磁波地中レーダーによって発見されたものである。
 王家の谷調査においてはハイテク機械で新しい王墓探査を行っている途中で、既に発見されているアメンヘテプ3世王墓の修復を行なうことになった。このプロジェクトはユネスコにある日本国外務省の信託基金を使っての国際プロジェクトであり、第二期目を終らせ、エジプト考古庁からも高い評価を受けている。このプロジェクトが一段落したら王家の谷の調査を再開したいと考えている。
 ダハシュール北遺跡の発見はエジプト学界に衝撃的であった。人工衛星の画像解析から発見した地下遺跡だったからだ。世界で初めてであった。ユカタン半島などで地上に存在している遺跡は見つかっていたが、地下遺跡は初めてだった。このプロジェクトは東海大学との共同研究であった。そしてもうひとつ、ギザ台地のクフ王の大ピラミッドの南側での第2の太陽の船遺構の発見がある。これは電磁波地中レーダーによるもので、現在、発掘・修復・復元のプロジェクトが開始され(2009年4月)進行している。
 現在の私たちの抱えているプロジェクトは以上の4つであるが、どれもが国際的な価値の高いもので、こうしたプロジェクトを私たち早稲田大学のエジプト学研究所がやれていることに感謝をしなければならないと思っている。

早稲田大学古代エジプト調査隊隊長 吉村作治

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