早稲田大学エジプト学研究所
 
概要 スタッフ アドレス 出版物 イベント   ENGLISH  
王家の谷・アメンヘテプ3世王墓の調査

第3期 アメンヘテプ3世王墓の保存修復プロジェクト中間報告

 王家の谷・アメンヘテプ3世王墓の保存修復プロジェクト第3期が2011年10月から開始されました(写真1)。プロジェクトは2012年3月まで継続予定ですが、開始から3か月を経た2012年1月現在の進行状況をご報告したいと思います。
 第3期のアメンヘテプ3世王墓の保存修復プロジェクトでは、主に1.天井壁画の保存修復作業、2.壁、柱の亀裂の補強工事、3.石棺の修復作業の3つの作業項目があります。以下それぞれの作業についてご紹介したいと思います。
 第3期プロジェクトでもこれまでと同じく日本国外務省ユネスコ/日本信託基金の助成を受け、またユネスコ、エジプト考古省の協力を得て作業を行っています。主任修復師はこれまでと同じくイタリア人修復師のジョルジョ・カプリオッティ氏が務め、イタリア、エジプト、日本の修復師チームが王墓の保存修復を実施しています。

(なお、これまでのアメンヘテプ3世王墓の保存修復プロジェクトについてはこちらを参照してください。)


写真1 王家の谷・アメンヘテプ3世王墓周辺

1. 天井壁画の保存修復作業

 アメンヘテプ3世王墓の天井は、濃紺の背景に黄色の星を描いた壁画で飾られています。他の壁画と同じくこれまでコウモリが長年にわたり王墓に出入りした結果、その排泄物や微生物の影響などで壁面は汚れており、また壁画の自然崩落、亀裂進行などによる被害を受けていました(写真2)。
 これ以上の崩落を防ぐために、まず壁画のコンソリデーション(強化処置)を実施し、その後、クリーニングを行い、壁画劣化の原因となるコウモリの排泄物、微生物の除去を行いました。現在、作業の半分が終了し、残る半分の作業を継続しています(写真3)。

写真2 天井壁画(E室)

写真3 天井壁画の修復作業風景


2. 壁、柱の亀裂の補強工事

 アメンヘテプ3世王墓には自然の亀裂がいくつもありますが、中でも埋葬室(J室)の壁と柱に大きな亀裂があり、第3期プロジェクトにて補強工事をする計画です(写真4)。自然の亀裂は墓の建設当時からあったもので、これまでに古代の補修の痕跡が確認されています。
 補強工事に先立ち、これまで亀裂の最終的な記録や専門家による計画細部の打合せを行いました(写真5)。今後、実際の補強工事を行う予定です。


写真4 柱の亀裂
(ベルトは仮止め用。白いガーゼは壁画面の保護用。)

写真5 専門家による計画細部の打合せ

 

3. 石棺の修復作業

  アメンヘテプ3世王墓の埋葬室(J室)には赤色花崗岩製の石棺が安置されていましたが、度重なる盗掘により、現在では破壊された蓋が残るのみとなっています(写真6)。この蓋の接合、クリーニング、そして展示を第3期プロジェクト中に実施する予定です。
 破片は100程度あり、現在、それぞれの破片の記録、接合作業とクリーニングを実施しています(写真7)。


写真6 アメンヘテプ3世の石棺の蓋

写真7 破片の接合・クリーニング作業

 その他、これまでエジプト、日本の若手修復師のトレーニング(写真8)、保存修復のための壁画のX線分析(写真9)などを行いました。2012年3月の終了を目指し、イタリア、エジプト、日本が一体となって、日々、保存修復作業に励んでいます(写真10)。


写真8 主任修復師ジョルジョ・カプリオッティ氏によるトレーニング

写真9 壁画のX線分析

写真10 修復チームとの記念撮影

 

メンフィス・ネクロポリス テーベ・ネクロポリス

クフ王の第2の太陽の船

王家の谷・アメンヘテプ3世王墓の調査
アブ・シール南丘陵遺跡 ルクソール西岸貴族墓調査
ダハシュール北遺跡 マルカタ王宮址
  マルカタ南遺跡